ALSと診断を受けたら
AFTER GETTING A DIAGNOSIS

ALS(筋萎縮性側索硬化症)についてQ&A

一問一答Q&A形式・監修:在宅総合ケアセンター元浅草 たいとう診療所
神経内科・リハビリテーション科・総合内科専門医 吉村菜穂子先生

Q01どんな病気ですか?

A01手足・のど・舌を動かす筋肉や呼吸をする筋肉がやせて力がなくなっていく病気です。 筋肉そのものが悪いわけではなく、筋肉に「動きなさい」と脳の命令を伝える運動神経の働きが悪くなるためにこのような症状がおこります。

Q02よくある病気ですか?

A02国の調査では、現在全国に(※)約10,000人の患者さんがいるとされています。 稀な病気であるために、特定疾患という国の指定する難病に指定されています。

(※ 出典:厚生労働省衛生行政報告例・令和3年度末現在)

Q03どんな症状ではじまりますか?

A03箸や鉛筆がもちにくい、重たい荷物がもてない、歩くと足をひきずってしまうなど手足の力のはいりにくさで気がつく場合と、ろれつがまわりにくい、のみこみが悪くなってむせるなどのど・舌の異常で気がつく場合の2つのタイプがあります。

Q04原因はわかっていますか?

A04多くの研究が行われていますが、現在のところはっきり原因が確定されているわけではありません。運動神経細胞を維持するための栄養成分がなんらかの原因で欠乏するのだろうと考えられており、食事・環境・遺伝子・感染症の方面からの研究がすすめられています。

Q05遺伝しますか?

A055-10%の患者さんは親から遺伝することがわかっています。

Q06どうやって診断しますか?

A06神経内科の専門医にきちんと診察をしてもらうことが何より大切です。その上で筋電図検査や脳・脊髄MRI検査をうけて診断がつきます。

Q07治療法はありますか?

A07完全になおすことはできませんが、進行を遅らせる薬があります。また症状にあわせてリハビリをしたり、困っている症状を軽くするためのさまざまな方法はあります。栄養を十分にとることも治療の一環として大切です。

Q08どうやって治療をうけていったらいいでしょうか?

A08大変な病気なので一人で闘病することは困難です。まずは信頼のおける主治医をもつことです。ALSの病気について一生懸命支えてくれ、なんでも相談のできる医師がそばにいてくれたら何より心強いと思います。大きな病院の神経内科を何箇所か受診して主治医を探してください
それからお住まいの地域の保健所に特定疾患の申請をされることで治療費や入院費の軽減措置をうけることができますし、病気に対するいろいろな相談にのってもらえます。
また日本ALS協会のような患者どうしの集まりにもぜひ参加してください。患者本人だけでなく、家族がどういう対応をしたらいいのか、ということについても有用な情報が得られます。

Q09進行しますか? 悪くなったらどんなふうになるのでしょうか?

A09残念ながら、なおすことはできないため進行の早さに個人差はありますが、日を重ねるうちに病気は少しずつ進行します。歩けなくなれば車椅子を使う必要が生じます。
食事をのみこむことができなくなった段階では、胃ろうによる、おなかの上から直接胃に管をとおしたり、鼻から食道を経て胃に管をいれ流動食で栄養を補給しなければなりません。
会話ができなくなれば筆談やパソコンによる会話が有用です。
つばや痰がだせなくなると、気管切開といってのどの下に穴をあけ痰を吸いだす工夫が必要です。寝ている間に呼吸が苦しくなる場合は鼻マスクから呼吸を補助する機械を夜間はつけます。日中も呼吸が苦しくなった場合は人工呼吸器をつけないと命にかかわります。
このようにいろいろな医療処置を加えることによって発病しても10年から20年生き続けることができます。人工呼吸器をつけなければ命を保てない段階に進行するには、発病してから2年~10年の期間があります。
人工呼吸器をつけてさらに生き続けるか、人工呼吸器まではつけずに死を覚悟するかは、一人ひとりの人生観・価値観によって選択されるべき問題です。
しかし「生きたい」という患者さんの思いが何より尊重されるはずです。

Q10この病気になったらずっと入院していなければならないのでしょうか?

A10長期に入院を希望される患者さまのために指定をうけた入院施設はありますが、数が限られていてすぐには入院できないのが実情です。
また体が不自由であっても意識も思考力も正常であるALSの患者さんには、なるべく普通の人と同じような気持ちで療養できるように、病院ではなく在宅療養をおすすめしています。まだ全国に普及しているわけではありませんが、一部の地域では看病してくれる家族がいない患者さんのために難病ケアハウスという介護付き住宅を作る試みもなされています。
どこで療養するかは、個々の患者さんの事情によって異なります。

Q11ALSが進行性の難病と聞いてショックを受けています。どうしたらいいでしょうか?

A11医学の研究は日進月歩です。今いい治療法がなくても近い将来どんどんこの状況は変化していく可能性があることを忘れてはいけません
例えばスーパーオキシドジスムダーゼ1(SOD1)という酵素が異常だとALSの症状の進行につながることがわかっています。この酵素が作れないように遺伝子操作をしたALSの実験動物に神経栄養因子を投与してALSの進行が遅くなったとか、この酵素が作られないような物質を合成して脳に注入したら長生きをした、という実験報告がここ1,2年にもありましたし、現在治験(保険が認可される前に患者さんに試してみること)中の新薬もいくつかあります。
この病気と正面から向き合うのは楽ではありませんが、ALSと共に生きる力をもてるように今出来る最善のことをしましょう

更に詳しい内容は、「ALSケアガイド」(著・発行:一般社団法人 日本ALS協会)をご覧ください。
※書店では販売していません。ご購入はこちらのページから

筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断されたら

1.診断後、まず読んでほしいこと

診断後、まず読んでほしいこと
https://alsjapan.org/diagnosis-what_you_have_to_do/

  1. ALSとはどんな病気?
  2. 変わるALSの治療とケア。「新しいALS観」とは
  3. ALSで受けられる助成等
  4. 日本ALS協会にご入会・ご相談ください

2.治療の進め方

ALSという病気の概略
https://alsjapan.org/how_to_cure-summary/

  1. ALSという病気の概略
  2. ALSの診断

3.生活支援(ケア)

初期症状と診断
https://alsjapan.org/care-early_symptom/

  1. ALS患者さんの症状経過と療養生活支援の相関図一例
  2. ALSの初発症状
  3. 診断にいたる過程

4.制度の活用

利用できる社会資源
https://alsjapan.org/system-available_social_resources/

  1. ALS患者の権利 得られる社会的支援と相談窓口
  2. 社会資源の活用について
  3. 社会資源活用の流れ
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